アスリート出身キャリアカウンセラー 玉ノ井 康昌さんインタビュー

 アスリート × 仕事 

玉ノ井康昌:たまのいやすまさ/城西大学でアメリカンフットボールを始める。ポジションは一貫してCB。1997年オービックシーガルズ入部。2002年、2004年、2006年オールXリーグ選出。 第2 回ワールドカップ(ドイツ大会/2003年)、第3回ワールドカップ(日本大会/2007年)日本代表。現役時代は「攻めるマンツーマン守備」を得意とし、ビッグゲームにこそ力を発揮する勝負強さが光った。2009年DBコーチ就任。またアスリートに対して自らの経験をもとにキャリアカウンセラーとしても活動している。今回はアスリート出身でキャリアに関しても深く関わっている玉ノ井 さんにスポーツ×仕事をテーマにインタビューを行った。

厳しい環境の中で

Athlete Society まず玉ノ井さんについてお伺いさせて下さい

玉ノ井 大学卒業後は実業団チームでアメフトを続けていました。所属先が大手小売り店だったので、仕事は店舗で働くなどをしていました。しかし、年働いたときに所属先の経営が厳しい状態になってしまい、実業団としてはアメフトを続けることが厳しくなってしまいました。ただアメフトは続けたいと思ったので、別の形でできないかと考え、なんとか働き口を見つけ、クラブチームへ所属するという形で続けることにしました。

Athlete Society クラブチームで続けるとはどのような形になるのですか?

玉ノ井 普通に社会人として働きながら、主に土日を使って練習 や試合を行っていく形になります。日々のトレーニングも必要なので平日は仕事の終わった深夜などを使ってトレーニングに励みました。もちろん条件は厳しいですがクラブチームのまわりのメン バーもそのようにしていました。逆にどれだけ苦しい中で頑張っているかをお互い自慢して競い合ったりしていました笑

またクラブチームは実業団と異なり専用の練習場も持っていないので、練習環境もままならなかったです。練習時間や練習環境は 優れていませんでしたが、成果を出すことが求められますのでいかに短い時間で効率的に成果を出すかを考えながら実践していました。また、環境が悪いのを嘆くのではなくコントロールできないことも楽しむような意識でいました。

そういった中でスポーツをしているので、まわりはビジネスマンとしても優秀だったと思います。商社の先輩はパワフルでしたね。練習の合間に電話で英語商談していてびっく りした笑そのような先輩をたくさん見てこれたのは刺激的で、自分も頑張らないといけないと思いました。

スポーツも仕事も両方100%

Athlete Society 玉ノ井さんの行っていた仕事と意識していたことを教えてください

玉ノ井 クラブチームに入った後は、法人営業を行っていました。平日はがっつり営業を朝から晩遅くまで働いていました。自分でリストを作って企業にアプローチをしていました。 最初はアポをとるのも断られてばかりで、なかなかうまくいかなかったのですが、うまくいく時間を分析して集中的に行うなど工夫をしていきながら結果を出せるように取り組んでいました。そんな中でも練習は必要なので、深夜仕事が終わった後12時や1時からトレーニングなどを行っていました。

仕事でもチームとうまくやれる方法も考えながら取組みました。試合の翌日の朝一に会 社に行って試合にきてくれたまわりの社員に感謝の気持ちを伝えていました。そうすると自発的に横断幕を作って応援きてくれたりして、職場に一体感が生まれた。これは嬉しく思いました。一体感が生まれたことで仕事もまたやりやすくなった。そのように土日や平日夜に練習もがんばり、仕事でも結果を出し続けているということでまわりが応援してく れるようになりました。

若いメンバーは仕事をすることでトレーニングの時間がさけないと嘆くがそうではないと思います。スポーツで学んだことが社会でも生きてきましたし、社会で学んだことがスポーツでも生きるという相乗効果を実感しました。僕はこれに助けてもらいました。ス ポーツ80%、仕事20%という考えではなく、両方100%という気持ちで活動していたのが良かったのではないかと思います。さらには遊びも100%笑よく時間を捻出して頑張っていましたね。

就職先がないと言われ悩んだセカンドキャリア

Athlete Society セカンドキャリアについてはどのように考えられてきましたか?

玉ノ井 キャリアについては29歳で引退を意識した際に、よく考えるようになりました。ア メフトで日本一になるような情熱をかけれるような仕事ができるかなと。しかしすぐには本気でかけれるものは見つかりませんでした。そこから自問自答をするようになりました。そのときに廃部に伴い就職活動をしたときを思い出しました。当時はもっと自分が何に向いているかもわからないですし、相談できる人もいませんでした。人材紹介会社に行けば、君のキャリアでは就職先はないと言われ凹みました。当時はとても悩んでいまし た。極限の心理状態だったと思います。

その時に漠然とですが、同じように悩んでいる人を解決できる人になれればと思い始めました。そんな中、キャリアカウンセラーの試験を受ける機会がたまたまあり、方向性に あっているかなと考え、勉強をして資格をとりました。その後もいろんな経験をするためにサッカーチームなどで働いたりしたが、やっぱりキャリアに関する仕事が向いているの かなと思いました。それが現在のキャリアカウンセラーの仕事を始めた経緯です。

社会で諦めるのはアスリートらしくない

Athlete Society スポーツを行っている方にカウンセリングする上で感じることはどんなことですか?

玉ノ井 一番共通しているのは社会に出る自信がないことだと思います。自分がやってきた競技は一生懸命やってきたが、それが社会にどういきるか全くイメージできない。だから社会に出たくない。なので、安易に時間売りのフリーターにいってしまうのが多いのかなというイ メージです。体しか使えないと狭義の視野でスポーツ関係の仕事につく。ジムトレーナーや体育家庭教師など自分がすぐできそうなところにしか手を出せていません。

でも私は話を聞いて意識しているのは「すごいじゃん、ここまでスポーツをやってきて。今話きいたけど、目標に 向かって頑張ったり、ポジティブに考えたり、やりきる意識があるなど、たくさんいいものをもっている。それを社会が求めているよと。」とやってきたことを認めることです。
「それを求めている企業や社会があるので、一緒に探そうよ。」というようによく話をしています。それだけで選手は主体的にどんどんなっていきます。その過程に携われるのは 嬉しく感じています。

またスポーツである程度の成績が出ていないとまわりに話せないと思っている選手が多い。そんなことはないのに。みんなスポーツをしっかりやってきているので魂のこもったス トーリーを持っている。それに気づかず、諦めてしまっている選手は多いと思います。そ れに気づかせてあげることを今後もっとやっていってあげたいと思っています。自分も同じ経験をしているので、俺でできたから君にもできるよ。とメッセージを伝えていっていきたい。

スポーツで学んだことは社会でも共通していることが多いにあると思っています。 ただ社会を知らないので視野がせまくなっている。ここで諦めてしまうのは本来アスリー トらしくない。だがあと押しがあればできる。なぜならいままでみんなやってきているから。 ただチャンレンジしないだけ。みんなスポーツでいろいろチャレンジしてきたので、社会でもチャレンジを続けてほしい。

アスリート同士で集まることで練習にもキャリアにも刺激を

玉ノ井 アスリート同士で繋がることは自分の経験からも非常に良いのではないかと思いま す。私もラクロスの選手やサッカーの選手などと交流する機会があり、良い刺激をたくさん受 けてきました。同じアスリートでもっと頑張っている人がわかりますし、自分がどのくらい頑張っているかもわかります。

また他のアスリートと共通点を見つけることができる。お互い勉 強ができる。ただやはり練習が第一なので、継続的な交流は現状では難しい。なかなか行けないし、心の ハードルが高いです。特にマイナー選手は行きにくいという面もある。そもそも探せないこともある。

アスリートソサエティにはどのような選手でも参加し、刺激を受けれるような場であってほしいと思います。

玉ノ井さんのカウンセリング活動
ソーシャルアスリートキャリア

陸上短距離:朝原 宣治 さんのメッセージ

アスリートからのメッセージ  〜4〜 

 みなさんこんにちは。一般的にスポーツ選手に対して持つイメージというのは、明るく開かれた世界で競技をしているという感じではないでしょうか?一面はそうかもしれません。

しかし、選手は競技の世界にどっぷりと浸かり集中していますので、社会とのつながりを持つことが難しかったり、自ら時間を割いて色々な世界とつながることが億劫だという一面もあります。社会とのつながりどころか、以外にも身近にいるはずのスポーツ選手同士のつながりさえも希薄な場合が多いのです。

私も現役の若い頃はそうでした。私は幸い36歳まで選手として活躍することができましたので、競技以外にも興味を注ぐ余裕ができ、社会とつながり色々な人達と交流を持つことができました。これは、もちろん選手としてもですが、引退してからもとても重要なことだと気づいたのです。そして、周囲のサポートにも素直に感謝することができました。

限られたアスリート人生の中で周りからの大きなサポートに気付かずに引退する選手もいると思います。引退して、今度は自分が支える側に立つと、さらに周囲からのサポートの大きさを実感しました。

今度は、色々な競技の様々な経験を積んできた選手と若い選手とがつながり、選手自らが社会とつながっていける環境を作っていかなければいけません。そして、周囲のサポートに対する気付きの機会を設けていければと考えています。特に近年は、アスリートの社会性が重要視されるようになってきました。

アスリートの意識が変われば、社会も変わる。みなさんにもっともっと応援してもらえるよう頑張っていきましょう!

朝原 宣治

卓球:松下 浩二 さんのメッセージ

アスリートからのメッセージ  〜3〜 

 私は、スウェーデン、ドイツ、フランス、中国で合計10年プレーをしてきたのですが、それぞれの国でスポーツの捉え方が違いました。フランスなどはスポーツを文化として捉え、スポーツは人間になくてはならないものだと言う認識が強く、ドイツは、フランスとは違ったスポーツ文化を持っており、フランスよりも勝敗にこだわる国でした。どちらの国にも言えることは、スポーツ選手のステイタスが高く、試合に勝った時など大きな称賛を受けました。

 なぜ、フランス、ドイツはスポーツの文化レベルが高いのか?
それはスポーツ選手が社会に溶け込み、社会との接点があるからだと思います。

 フランスにしても、ドイツにしても、地域と密着をしたクラブスポーツが主流です。
また、選手達も社会貢献のために、子供たちにスポーツを教えたり、社会との接点を持つことが多いです。

 アスリートソサイエティもスポーツ選手と社会との接点を見出して、スポーツ選手のステイタスが向上をするための努力をして行きたいと思います。

 皆さんとともに日本のスポーツを盛り上げて行きましょう!

松下 浩二

ビーチバレー:朝日 健太郎 選手のメッセージ

アスリートからのメッセージ  〜2〜 

現在の日本において、
「アスリート」という言葉が一般的に使われるようになったのも、
アスリートたちがモチベーションという言葉を使い自分を表現するようになったのも、
ここ数年のような気がします。
それだけ、日本におけるスポーツに対する情報や知識、関心が増えてきた証なのかもしれません。

そして今、私たち選手自身も変わろうとしています。

勝敗の星を追いかけるだけではなく、
コンマ何秒を競い合うだけではなく、
自分達の携わっているスポーツにはもっと大きな力があるんじゃないかと思い始めています。

今ままで、
個として活動していたアスリート達は自分の競技以外のほとんどが見えなかったし、
見ようともしなかった。
しかし、それだけでは世界のスタンダードにはなれない。

アスリートは視野を広く持ち、自分ができる役割を新しく発見することが、
自分の成長に繋がっていくと考えるようになってきました。。

まずはスポーツを通じての社会貢献、いや社会還元かもしれない。
毎日打ち込んでいるこのエネルギーを、もっと生かしたい!
我々アスリートができることを、具体的に探していこう!
アスリートソサイエティはそのための場所です。

まずは私たちアスリートたちは横のつながりを持ち、
そして社会との接点を共有する。

そして今まで見出せなかった、
アスリートと社会との接点を醸成していく。

お互いの距離が今まで以上に近くなれば、
日本のスポーツの新しい顔がきっとできるはずです。

新しい一歩、みなさん一緒に踏み出しましょう。

朝日 健太郎

陸上:為末 大 選手のメッセージ

アスリートからのメッセージ 〜1〜 

撮影:前田せいめい(JBpress)


 私たちアスリートは、これまで多くの感動を社会に提供してきました。会場で、テレビを通じて、または直接会う事で多くの人を勇気づけてきました。しかし、華やかに見える反面、現在一部の競技以外の多くのアスリートの置かれている状況はとても厳しいものです。なぜ、あれほど世の中に感動を提供しているアスリートの状況が、これほど苦しいのでしょうか。これまでは選手自身も好きでやっているのだから仕方ない、とあきらめていました。しかし、私は本当にそうだろうかと考えています。

 例えばアスリート達が、今よりも社会との接点を持っていったら、社会はもっとアスリートに興味を持ちます。アスリート達が集まり、みんなで何かを行ったら、ムーブメントは大きくなります。そして、アスリートは尊敬を集め環境は改善される事でしょう。選手達が自分たちで動き出せば、現状は必ず改善できるはずです。日本は今元気がありません。子ども達は夢が無いといい、大人達は明日が見えないと言います。日本には今、夢や希望が足りないと思います。
 アスリートが今よりももっと社会に働きかければ、子ども達が夢を語り、大人達が明日への希望を持ち、日本が元気になるはずです。夢を見る力、一生懸命な人を勇気づける力、それこそが、アスリートが持つ一番の力なのではないでしょうか。


 アスリートが社会にメッセージを発信する事で、世の中を勇気づけたい。そんな強い願いを持ってアスリートソサイエティーは誕生しました。スポーツを通して社会に希望を!!いつの日か、アスリートが日本を変えたと言われる日が来る。私はそう信じています。
 是非アスリートソサイエティーと一緒に、スポーツを、そして日本を変えていきましょう。

為末 大


為末 大 選手プロフィール

世界大会において、トラック種目で日本人初となる2つのメダルを獲得した陸上選手。
10台のハードルを超えていくこの種目は、ハードル間を少ない歩数で走る選手が有利であり、世界トップクラスの選手の大半が、前半13歩でハードル間を駆け抜ける。当然身長の大きい選手が有利である中、テクニックに加え優れた調整力を持つ為末も13歩で走り、170cmと決して恵まれているとはいえない体躯ながら、世界の強豪と対等の戦いを展開する。
侍ハードラーの異名を持つ。
公式ホームページ:http://sports.nifty.com/tamesue/index.htm