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為末大がブータンのスポーツ親善大使に就任。ジュニア代表選手を指導。

  • by TanakaYoshiro

為末大 ブータンのスポーツ親善大使に就任


元プロ陸上選手で、現在アスリートのセカンドキャリア支援を行う一般社団法人アスリートソサエティ代表理事の為末大は、このたびブータン王国オリンピック委員会[以下、BOC(Bhutan Olympic Committee)]のスポーツ親善大使に就任致しました。
為末は2014年9月に初めてブータン王国を訪問、「世界一過酷な一日のマウンテンバイクレース」と呼ばれる“Tour of Dragon”を見学、これを主催していたBOCと両国のスポーツ文化・陸上競技・東京オリンピックなどの意見交換を行いました。
また、2020年の東京オリンピックを迎えるにあたり、「日本人選手が獲得するメダル数も重要だが、日本人アスリートや指導者が世界へと渡り、現地でのオリンピック選手を生み出し、その選手が自国の人々へ希望を与えるということが、日本らしい貢献なのではないか」と考えています。
その背景から、まだオリンピック経験選手が少なくメダル獲得経験のないブータン王国を援助していきたいと提案。
その後、約半年にわたり交渉を続けてきました。

そして2015年3月にブータンを再訪、BOCのスポーツ親善大使に就任しました。
BOCは1983年11月に創設された、比較的新しい組織で、現在15の競技団体が属しています。
日本オリンピック委員会(JOC)と同じく、オリンピック憲章に基づく国内オリンピック委員会(NOC)として、オリンピックの理念に則り、オリンピック・ムーブメントを推奨し、スポーツを通じて世界平和の維持と国際友好親善に貢献するとともに、自国のスポーツ選手の育成・強化を図り、もってスポーツ振興に寄与することを目的としています。

陸上競技においては、オリンピックに向けた選手・コーチの育成、短・中・長距離のコーチの派遣、ブータン選手を日本へ招待する交流プログラムの実施、必要器具の譲渡等を想定しています。
また為末に限らずアスリートソサエティとして陸上競技以外の選手を派遣、競技普及や選手・コーチへの指導を行う他、ブータン王国で盛んな自転車競技やトレッキングなど、日本人を誘致するスポーツツーリズムへも協力していきます。
2015年3月31日~2017年3月31日の2年の任期でどれだけのことができるか、Bhutan Amateur Athleticsからオリンピック選手を輩出するべく、我々もBOCと共に挑戦していきたいと思います。

ブータン陸上連盟との3日間強化合宿


陸上競技種目において、ブータンはいまだオリンピックに出場したことがありません。
ヒマラヤ山脈の麓にあるこの国では、国土の大半が山岳地帯にあり、平坦な土地が少なく、陸上競技を行えるトラックは国内にたった一つなのです。
その陸上競技場を拠点に、ブータンアマチュア陸上連盟に所属する小学生から高校生までの国内トップクラスの若手アスリートは日々練習を行っています。
陸上競技場はまだできたばかり、陸上チームも誕生したばかり、短距離の専門指導者もいません。
国外の大会にも何度か出場しているが、まだまだ結果を残すことができていないのが現状です。
2020年の東京オリンピック出場を目指すブータンアスリートに力を貸すべく、今回ブータンスポーツ親善大使に就任した為末大はブータンアマチュア陸上連盟への支援を決めました。
最初の支援として、ブータンオリンピック委員会、ブータンアマチュア陸上連盟と連携した3日間の強化合宿を開催。
3日間の合宿では元オリンピアンから少しでも多くのことを学びたいと、ブータンの若手選手たちが約30人、また学校でスポーツを指導する教員たちも集まり、為末がこれまで行ってきたトレーニング方法やオリンピック出場経験を伝えました。

ブータンの選手たちにとって、オリンピアンに会ったのは初めての経験であり、多くの選手たちが目を輝かせ、為末に積極的に質問する姿が印象的でした。

 

強化合宿3日間のプログラム内容

1日目 2日目 3日目
午前
・合宿に合流普段の練習風景を見学。
・100mタイムトライアル。
午後
・為末指導開始。w-upを兼ね、各種スプリントドリルを紹介。
・スプリントフォームの指導。
・スターティングブロックを使ったスタート指導。
午前
・ 室内での講義 (・トレーニングの基本・トレーニング方法・目標設定・Q&Aなど)
Q&Aではブータンアスリートから、食事、トレーニング、オリンピックについてなど様々な質問が飛び交いました。午後
・ w-upを兼ねて各種スプリントドリルを指導
・ウェーブ走(40mダッシュ→40mリラックス走→40mダッシュ) 100mの中間疾走に重要なスピードを維持する技術を指導。
・ リレー個人指導
・才能がある選手を個別に指導しました。タブレット画像で走りの映像を確認しながら、どうやったらよくなるのか一緒考える内容でした。
午前
・w-up
・3ポイントスタートダッシュの練習
・加速走
・100mタイムトライアル 多くの選手が自己ベストを出すことができるようになる。
午後
・補強トレーニング
個人指導
・才能がある選手を個別に指導しました。

 

 

ブータン人選手からのメッセージ

ハバ・ツェリン(19) デニシュ・クマル(18) タシ・デンドゥップ(17)
専門種目:100m,200m 専門種目:100m 専門種目:100m、走り幅跳び
「為末大選手から陸上のスキルをたくさん学ぶことができました。これまでの練習とはまったく違う練習でしたし、今回の練習は僕たちにとってベストだったと思います。将来、オリンピックでメダルを取ることが目標です。」 「400mH世界で3位になった為末大選手にあって最高の気分でした。彼のようなコーチがブータンに来てくれたことはとても幸せです。彼が教えてくれたトレーニングはシンプルで効果的でした。」 「偉大なオリンピアンにこれまで会ったことがなかったので最高に嬉しかったです。練習はとても興味深かったし、楽しかった。幸せな時間でした。たくさんの新しい動きを学ぶことができました。将来オリンピックに出場することが夢です。」

 

合宿を通して・今後の予定

今回合宿に参加した選手から「人生で初めて、オリンピアンに会って興奮した」「モチベーションが高まった」「効果的な練習方法を学べた」などの声を多く聞きました。
これまでオリンピックは夢物語と思っていたブータンのアスリートがオリンピアンから直接指導を受けることで、オリンピックをより身近に感じられるようになったのではないでしょうか。
毎日コーチに見てもらい練習ができるという環境ではないブータン人若手アスリートたちにとって、質の高い練習を継続させるのは困難です。
そんなブータン人若手アスリートに為末は、「目標設定の大切さと自分で考える大切さ」を丁寧にそして、熱く伝えていました。
そんなメッセージが響いたのか、合宿中何人かのアスリートは、「言われたことだけをやるのではなく、自分で考えていいと思ったことを試す」ということ実践していました。
今後も年に数回、定期的にブータンを訪問し指導を継続しながら、コーチがいなくても自分でトレーニングを考えられる自立したアスリートの育成を目標にしています。
またスポーツを通して、生きる上で大切な価値観も伝えていけたらと思っています。
次回は9月に為末のブータン訪問が決まっており、アスリートソサエティとしては、ブータンアマチュア陸上連盟と継続的な協力をとっていきます。

 

<URL>
BHUTAN OLYMPIC COMMITTEE:   http://bhutanolympiccommittee.org/ 
Athlete Society:    https://www.athletesociety.org/ 
侍: http://tamesue.jp/
親善大使就任(日本語) http://tamesue.jp/news_20150414/  
(日刊)  http://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/1461011.html 
(現地)  http://bhutanolympiccommittee.org/mou-signing/ 
Tour of Dragon:  http://www.tourofthedragon.com/
JOC:  http://www.joc.or.jp/about/
コーディネーター・KENSAKUSEKI PHOTOGRAPH: http://kensakuseki.com